まず、『膠彩画(こうさいが)』という絵画の分類は、今の日本ではあまり聞きなじみがないかと思います。

例えば洋画という分類の絵画は、油を使って顔料を定着させるので『油彩画』ということもありますよね?それと同じで、一般的に『日本画』と分類されるものは膠を使って顔料を定着させる絵画なので『膠彩画』ということもできます。

・・・ということを前提として。では、なぜ私が自分の作品に対して『日本画』の言葉を使わずに『膠彩画』というジャンル分けを与えているか?ということになります。

結論から言ってしまえば、『日本』の部分に捉われたくない、ということです。

『日本画』と最初から宣言して人前に出すと、やはり鑑賞者には【日本的な】【伝統的な】【日本人の】というような先入観を持たせてしまうのではないかと思うのです。そして、それに基づいての観点からしか、感想を持ってもらえないのではないか?作品の本来の意図が見失われてしまうのではないか?ということを私はおそれています。

私は制作する際に、全く『日本』を意識していません。『日本的』なものをつくりたいとも思いません。(題材に日本の古典のイメージを反映させたりすることはありますが、それは単純に、その内容が面白い・良いと思うからであって、『日本画だから』とか考えてやっているわけではありません。)

そして、鑑賞してくれる方には国籍や民族を問う以前に『ヒト』であることを求めます。『ヒト』として、作品を見て欲しいと思っています。

ただ、もしも鑑賞者が私の作品を見て“ああ、日本画だ”という感想を持たれたならば、その時は私の作品はその鑑賞者にとっては『日本画』なのでしょう。私の絵が『日本画』に当てはまるかどうかは鑑賞された方個人個人が決めて下さればいいと思っています。別に、必ずしも『膠彩画』と呼ばれることにこだわっているわけでもありません。

あと、言い訳っぽいですが、公募に応募する時は臨機応変に『日本画』の分野で応募しています。
だって、『膠彩画』の分野が公に設定されていない現代日本では、そうでもしないと発表する機会もいろんな方に作品を見ていただくチャンスもなくなってしまうやんか〜p(>o<)q
(笑)


追記:『日本』を追求しないのなら、なんで日本画の画材を使うの?と疑問を持たれる方がいるかもしれませんが、答えは至って単純で、顔料の色が鮮やかで気に入っているのと、扱いにくい画材たちとつきあうのが結構おもしろいと感じていること、あと、私自身が学生時代からアクリル画や油彩画を学ぶことなくずっと膠を使って絵を描いてきた、その積み上げてきた時間を無駄にしたくないという思いがあるからです。


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